[旅館外2] 森久保乃々 :
[旅館外2] 森久保乃々 :
[旅館外2] 森久保乃々 : 今日は初めて行く場所、家族一同で温泉旅行。
[旅館外2]
森久保乃々 :
私は集団ってあんまり得意じゃないんですが、たまには家族とこういうのも悪くはないかもって、今回は思えたんです。
[旅館外2]
森久保乃々 :
………思えたんです。
[旅館外2]
森久保乃々 :
私以外全員風邪引くって聞いてないんですけどぉ……
もうむーりぃ………
[旅館外2] 森久保乃々 : そんなこんなで私は今一人でここに来ています………。
[旅館外2] 森久保乃々 : みんな風邪引いてるんだし私が看病しておかなきゃとは思ったんですが、
[旅館外2] 森久保乃々 : 「せっかくいいところ予約したんだから乃々ちゃんだけでも行ってきて!おねがい!!」
[旅館外2] 森久保乃々 : うう………気持ちは分からなくもないですけど…………。
[旅館外2] 森久保乃々 : 旅行先のリサーチは家族に任せっきりで、もりくぼはここの事なんにも知りません。
[旅館外2] 森久保乃々 : とりあえず旅館の場所は目指してるけど………
[旅館外2]
森久保乃々 :
「…………」
ある建物の前につき、少しそれを見つめる。
[旅館外2]
森久保乃々 :
「……………」
多分……合ってる………?
[旅館外2]
森久保乃々 :
「……………」
それっぽい気はするけど………
[旅館外2]
森久保乃々 :
「……」
自信がないです………。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : …あら?
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ちょこちょこ動く見慣れた影、あれは…
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 森久保ちゃん?
[旅館外2] 森久保乃々 : 「うう………」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「…何してるのかしら~?」
いつも通りと言えばいつも通りだが、まぁ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 困っている感じなので、お声がけ、しておきましょ
[旅館外2] 森久保乃々 : 「……うひゃう……!?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「えっ…あっ………」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「と、巴さん………?」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「森久保ちゃん、どうも」
手を振る、家族と逸れたのかしら
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…お節介だったかもだけど~」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「もしかして、迷子とか?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「多分、合ってるとは思ってます………」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「えっと……ここ行くつもりなんですけど………」
スマホで行き先を見せる
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…あら」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「それここね、ふふ」
くすくす笑いつつ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「誰かと待ち合わせだった?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「ああ……よかった………」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「その……家族と来るつもりだったんですけど………」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「みんな風邪引いちゃって……」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…ふむ?ふむ?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : あれ?じゃあ
[旅館外2] 森久保乃々 : 「それで……もったいないから私だけでもって………」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 森久保ちゃん一人で…?
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「一人で来たの!?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい…………」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「あら…あらら」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…大丈夫?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 一応他人の立場だがそれでもわかる
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 彼女はちょっぴり、引っ込み思案だし…だから心配になる
[旅館外2] 森久保乃々 : 「リサーチとか全部私以外に任せてたので……ここの事なにも分かってないのが不安では……あります…」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…ん~」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : どうしましょう、私は一人のつもりだったけど…
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : いや
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : …気持ちよく休暇するなら、やっぱり
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…じゃあ、その」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「もしよかったらだけど」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「一緒に行く?森久保ちゃん」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「え、あ………っ」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「その……い、」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「いいんですか………?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「そりゃあ」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「一人は大変でしょ?森久保ちゃんも」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい……」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「じゃあいいわよ」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「幸い、私も身軽だしね」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「……………っ」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「その………」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「……………ありがとうございます」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「心強いです」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「いいのいいの」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「子供だしね、あんまり気にしなくていいもの」
[旅館外2] 森久保乃々 : 巴さんと……一緒…………。
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「むしろ、お父さんお母さんの代わりにはちょーっと心細いかもだけど」
苦笑いして
[旅館外2] 森久保乃々 : 「……そんな事ないです」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「もりくぼはいま……凄く安心してますから」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「ふふ…ならいいけど」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「じゃ、受付しちゃいましょうか」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい、行きます」
[旅館外2] 森久保乃々 : 一人で心細かったけど……
[旅館外2] 森久保乃々 : 巴さんと、一緒……。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…あら」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「どうかした?」
ちらり、振り返って
[旅館外2] 森久保乃々 : 「あっ……その」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「な…なんでもないです……」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「行きましょう……っ」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「えーっと」
…まぁ、これくらいは
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「ま、こういう機会だしね」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「親みたいに気楽に何か言ってくれていいから」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「それじゃ、行きましょ」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「はい……」
マミについていく
[旅館外2] 森久保乃々 :
[旅館外2] 巴マミ(31歳) :
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ちょろろ、緩やかな川の流れ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 清い流れは、静かに続く
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : それを、私と
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 彼女はゆっくり、ゆったり
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 眺めている
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…風流、ねぇ」
[旅館外2] 森久保乃々 : 元からこういう所で、のんびりするのが好き。でも今はそれだけじゃない。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「あ、森久保ちゃん」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい…静かで……落ち着きます」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「アイス食べる?」
手に持ったアイスを
[旅館外2] 森久保乃々 : 「あっ、ありがとうございます…!」
[旅館外2]
森久保乃々 :
少しだけ慎重に、大事そうに
それでいてどことなく嬉しそうに受けとる。
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「おいしい?」
ゆっくりかがんで
[旅館外2]
森久保乃々 :
「……あむ」
小さく一口。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : …
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : …
[旅館外2] 森久保乃々 : 「……おいしいです」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : こそこそ、こそこそと
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ぱしゃり
[旅館外2] 森久保乃々 : えっ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : その様子を先程景色を映していたスマホで
[旅館外2] 森久保乃々 : あっ……
[旅館外2] 森久保乃々 : 「とっ、巴さん……?」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「…折角の旅行だし、ね?」
にこりと笑って
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : とはいえ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 割と衝動的にやっちゃった!
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ど、どうしましょ…流石に怖がらせちゃったかしら!?
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「親御さんもホラ、写真ある方が嬉しいだろうし…ほら」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : あたふたしてる、私大人げない
[旅館外2] 森久保乃々 : 私が…私が………?
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「私もホラ、折角だからそういうのあると…」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「嬉しいなーって…」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : あ
[旅館外2] 森久保乃々 : あっ……そういう事だったんだ………
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : "私も"って何言ってんだろ
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 変な人見たいじゃない、あわわ
[旅館外2]
森久保乃々 :
てっきり、巴さんが私の事撮りたくてやってたんだと、勘違いしてた……。
[旅館外2]
森久保乃々 :
私のため、だったんだ………。
巴さん、やっぱり優しい………。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : わたわた、弁明に困っている31歳の図
[旅館外2] 森久保乃々 : でも………、
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : だけど意外と、落ち着いてる彼女に頭が冷えて
[旅館外2] 森久保乃々 : 「巴さん、ありがとうございます」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…えっと、驚かせてごめん…え?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「あ、うん、いいのよ、せっかくの旅行じゃない、ね?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「そういう風に、私のこと考えてくれて……」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「だって、一緒にいるもの」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「楽しく旅行したいし、ね?」
困ったように笑って見せつつ
[旅館外2]
森久保乃々 :
「はい……ありがとうございます」
マミの優しさに喜びを表情で示すも
そこにはどこか気付きづらい小ささを帯びた、複雑そうな部分も写っていた。
[旅館外2] 森久保乃々 : ……巴さんが私に優しくしてくれるのは、本当に嬉しい。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…ああそうだ」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「折角だし…」
もういい、ここは
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「他にも、いい?」
踏み込むわよ!巴マミ!
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ちらり、スマホを見せる
[旅館外2] 森久保乃々 : 「えっ、」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はっはい……!」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「ああ、よかった…じゃあ!」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : スマホをカチカチ弄って
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : そのまま森久保のとなり、屈んで顔の高さを合わせて
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「はい、チーズ」
河の景色を背に、並んで写真を
[旅館外2]
森久保乃々 :
「ぴ、ぴーす」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ピ、っと
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 二人の写真がスマホに
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…えへへ」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : なんだか嬉しい
[旅館外2]
森久保乃々 :
「あうぅ……もりくぼは……ちょっと変な顔………」
写真に写るぎこちない自分の笑顔を見て。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : あんまり、距離が近くない印象だったから
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…いや、いい写真よ」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「ふふ、いい思い出」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「そう言ってくれると…助かります」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「思ってたより、楽しんでるわ」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「私」
なんだかポヤっとした顔で言う
[旅館外2] 森久保乃々 : 「私も……です」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「他にも色々行きましょ?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「うんと楽しんでる写真、欲しいの」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい……私も、色々行ってみたいです」
[旅館外2] 森久保乃々 : ……巴さんと。
[旅館外2] 森久保乃々 : ………………………………
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : こくり、頷いて
[旅館外2] 森久保乃々 : ………こんな風に
[旅館外2] 森久保乃々 : こんな風に、一緒にいてくれて、私に優しくしてくれる事が今は嬉しい。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「よしっ」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : ぐっと、腕を構えて
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「次は…足湯とかどう?ね」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はい……行ってみましょう」
[旅館外2] 森久保乃々 : 今だって、そう。
[旅館外2]
森久保乃々 :
だから、さっきの事
あそこで引っ掛かった思いは
少し忘れてしまおう。
[旅館外2]
森久保乃々 :
だって、私に優しくしてくれたのだから
そんな事思ったら、駄目だから。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…あら?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 何となく、何となく
[旅館外2]
森久保乃々 :
『私の事撮りたくて撮ってくれた』
そう思ってほしかった、なんて。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : もしかしたら、気にし過ぎかもだけど…
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…森久保ちゃん?」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「はっはい……?」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : さっきまで行き先に眼を据えていた顔で
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 振り向いて
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「その~…えーっと」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「なんだか、えーっと」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「何か、気になる事とか、あったかなぁって」
言ってしまえば勘
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 正直大人になってからは頼ってなかったけど
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 無性に気になるので、久しく
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 勘を信じて、切り出す
[旅館外2]
森久保乃々 :
「気になること………」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「………っ」
ほんの一瞬だけ、声が詰まる。
[旅館外2]
森久保乃々 :
「…大丈夫、ですよ?」
しっかりと答える。
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「…」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「森久保ちゃん」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「私は家族じゃないけど、でも」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「もしも何かあったら、ほんと」
[旅館外2]
巴マミ(31歳) :
「好きに言って大丈夫だからね、ふふ」
ニコリ笑って、振り返り
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 「さ、行きましょ!」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「ありがとうございます……」
[旅館外2]
森久保乃々 :
「じゃあ、その時は……遠慮なく……」
[旅館外2] 森久保乃々 : 「……行きましょう」
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : そのまま
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 少し賑やかな温泉街に繰り出すのだった
[旅館外2] 巴マミ(31歳) : 二人の足音響かせながら…
[旅館外2] 巴マミ(31歳) :
[旅館外2] 森久保乃々 : 巴さんの厚意を無駄にはしたくない。
[旅館外2]
森久保乃々 :
だからといって言えるわけがない。
[旅館外2] 森久保乃々 : 私のこれは、相手の優しさを踏みにじる事でしかないから。
[旅館外2] 森久保乃々 : だから、今は………。
[旅館外2] 森久保乃々 :